令和2年 第4回定例会 11月30日 一般質問
1、児童相談所の設置について
2、保健所の体制について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応や、他にも、区民の生活を守るために日々激務をこなされている職員や関係者の皆様に感謝を申し上げ、質問をさせていただきます。
1番、児童相談所の設置について。
2016年の児童福祉法の改正において、特別区も独自で児童相談所(以後、児相と言います)を開設できることになりました。中野区にも2022年2月の開設を目指して、他自治体の児相へ区の職員を派遣する、児相経験者を採用する等、開設に向けての準備を進めているところです。地域包括ケア推進調査特別委員会でも議題として報告を受け調査をしていますが、改めて児相を中野区に設置することについて、関連事項も含めて質問させていただきます。
まず、児相の体制について、伺います。
先日の総務委員会で示された「区政構造改革の基本方針について」には、「区政構造改革は、財政的な非常事態に対処するとともに、新たな行政需要に応じた効率的かつ効果的なサービス展開を図るため、行財政の構造的な改革を集中的に進め、持続可能な区政運営を目指すものである」。また、組織の再編の部分では、「新型コロナウイルス感染症対策のほか、児童相談所の開設など主要な行政課題に注力していく必要があるが、それと並行して、ウィズコロナ時代への対応や業務改善の観点から、あらゆる業務、手続き、施設の管理・運営方法などの効率化や省力化、デジタル化を推進して業務量を削減し職員配置を見直す」としています。現在、区には様々な行政課題がありますが、新型コロナウイルス感染症対策と並んで、あえて児相の開設を主要な行政課題として挙げている理由をお聞かせください。
区に児相を設置することによって、これまでの都児相と区の子ども家庭支援センターではできなかった一元的な運用の展開ができることがメリットとして挙げられていますが、児相を区に設置することによる最も大きな利点について、お聞かせください。
業務改善の観点から、あらゆる業務、手続、運営方法等の効率化や業務を削減していくことが今後一層求められます。現在すこやか福祉センターに子どものための相談機能があり、さらに新しい児童館機能施設にも相談機能を持たせる予定となっています。相談機能の場所が広がることはありがたいですが、運営方法と効率化、省力化で全体の適正な定数管理を実現していくとする区の構造改革の方針とは矛盾しているように思います。児相設置後、地域の連携によるさらなる有効的な相談体制をどのように構築していくのでしょうか。法定で定められた職種の専門家、研修を受けた職員、他自治体から来た児相経験者等、多くの職種の専門家により児童相談所が設置される予定ですが、その専門家集団の有効活用が図られる体制整備の検討を進めていただきたいと思います。現在、児相内部の相談体制整備の準備は順調に進んでいるのでしょうか。
先日、地域包括ケア推進調査特別委員会で講演いただいた明星大学の川松亮教授の資料によると、全国の児童相談所の相談種類別相談対応件数割合、2018年度厚生労働省福祉行政報告例を見ると、虐待相談が全体の32%、虐待を除く養護相談13%、非行相談3%、障害相談37%となっており、障害の相談の比率が最も高いことを示していました。これは、愛の手帳(療養手帳)の申請事務が児相にあり、相談から申請手続の流れで相談件数が多いということで、区の児相設置後は手帳申請・更新事務等の区の事務的な負担は増えるものと思われます。それでも、地域資源を把握する区がその後スピード感を持って支援に結びつけてくれるのであれば、利用区民にとってはサービスの向上につながります。障害のあるお子さんを育てている方にとっては便利になると考えてよいのでしょうか。
次に、虐待対応について、伺います。
11月19日の読売新聞によると、厚生労働省が11月18日発表した2019年の虐待件数、児童相談所の虐待対応件数は19万3,780件で、学校、幼稚園、教育委員会からの児相への相談・通報件数は前年度比で3割増えたとあります。しかし、連携不足により対応が遅れるケースが後を絶たないと書かれていました。
子ども家庭支援センターの子ども家庭相談事業新規相談件数を見ても、昨年度は2017年度、2018年度と比べて約1.5倍と増え、その経路は全体の76%が関係機関からの相談となっています。子どもの暮らす地域で虐待が早期に発見され、速やかな連携体制が取られ、子どもたちが守られることが大事なのです。これまで児童館が担ってきた地域の様々な年代の区民と児童福祉の専門家である児童館職員が子どもたちを見守り、毎日の生活の中で虐待や子どもの課題等を早期に発見してきた機能がなくなり、学校の中のキッズ・プラザと学校の中の学童クラブに移行していくことになると、子どもの成長を地域で見守る力、共助の部分が低下してしまわないかと危惧しています。お考えをお聞かせください。
以前、私は、東京保護観察所の所長と会談する機会がありましたが、所長は、地域には要保護児童対策地域協議会があり、その存在が大事であると語られていました。児相設置後は、児相が中心となり、約250の団体で構成されている要保護児童対策地域協議会を最大に活用して、子どもたちと育児に不安を抱える保護者、孤立している家庭などを早期に発見し、対応していかなくてはならないと思います。地域連携の核となる要保護児童対策地域協議会の在り方について、児相の設置を機に、これまでの検証を行う必要があると考えますが、区は検証を実施しているのでしょうか。
児相設立まで1年強となりました。川松教授の資料にもあるように、児相を設置しても、それを取り巻くネットワークが成熟しなければ十分な支援体制にはならないと危惧します。虐待などで支援が必要な子どもたちを見逃さず、しっかり支えることができるよう、区が運営する児相の組織はもちろんのこと、さらに地域の子育て環境とネットワークを実効性のあるものにする必要があると考えます。区はどのようにリーダーシップを発揮していくのでしょうか。
その他で、保健所の体制について、伺います。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。11月21日、東京都内の感染者数は539人、全国で連続過去最多を更新しました。27日にはさらに増えて、東京の新規感染者数は570人に上りました。
私は、第2回定例会で、新型コロナウイルス感染症に対応するための保健所の職員体制について、質問しました。その中で、第2波、第3波の流行に備えて職員体制を整備しておくことが必要であると申し上げました。その時点での区のお答えは、今後、第2波、第3波の感染拡大に備え、これまでの経験を生かし、速やかに応援職員を配置できる仕組みが必要であると考えているとの答弁でした。今、まさにその第3波が来ていますが、現在保健所の職員体制はどのようになっているのでしょうか。
新型コロナウイルス感染症に対応する職員は、連日残業や休日出勤等で肉体的にも精神的にもぎりぎりの状態で仕事をされていると思います。11月23日のテレビでは、中野区の保健所では相談が多く、スタッフを2倍にしても鳴りやまない電話の対応に追われていると報道されていました。保健所は、すこやか福祉センターや本庁、委託事業者等から応援を受けていますが、それでもまだ厳しい状態が続いています。すこやか福祉センターの側でも絶えず職員を派遣しているので、もうこれ以上保健所への応援に人を回せない状態のようです。これから本格的な冬に向かい、新型コロナウイルス感染症はさらに拡大し、さらにインフルエンザの感染も広がる可能性もあります。もし新型コロナウイルスのワクチンができて接種へと進んでも、そこで仕事がなくなるわけではなく、保健所の業務はむしろ増えていくと考えられます。本来ならば正規職員を採用するのがベストですが、それがかなわないのであれば、委託事業者等の派遣職員を増員して保健所の体制を強化するべきだと思いますが、いかがでしょうか。
もし保健所の、この厳しい状況の原因が人材不足だけではなく、体制に問題があるのであれば、仕事の検証、改善に早急に取り組む必要があります。新型コロナウイルスに対応する職員体制の改善を求めます。いかがでしょうか。
御清聴ありがとうございます。
○区長(酒井) 私からは、児童相談所についての項でお答えいたします。
最初に、区が児童相談所を設置する意義についての御質問について、まとめてお答えします。区は、多様化、複雑化する子育てや教育の問題に総合的な対応を図るため、児童相談所機能を含む子ども・若者支援センターを整備することといたしました。児童相談所を設置し、子ども家庭支援センターと一体で運営することによって通告窓口が一本化され、継続的な対応が可能になります。また、必要に応じて介入、措置等の専門的アプローチも一体的に行うことによって一貫した支援を行うことができると考えております。さらには、基礎自治体としての強みを生かし、関係機関と連携することによって地域の社会資源を生かした支援を行うことができると考えております。
続きまして、子どもと子育て支援家庭に関わる相談支援体制の再構築についてでございます。すこやか福祉センターは、子育て世代包括支援センターとして妊娠期から子育て期にわたる総合的な相談や支援を、児童相談所、子ども家庭支援センターでは虐待のようなハイリスクケースに関わる支援をそれぞれ実施いたします。新たな児童館では、地域の子育て支援活動の拠点として、日常的な見守りの中から支援対象者を発見し、必要な支援につなげてまいります。これらの各機関の連携によって相談支援体制の充実を図っていくことを考えております。
続きまして、障害児に関わる相談窓口についてでございます。児童相談所では、愛の手帳に関わる相談をはじめとした障害に関する相談を行っております。区では、児童相談所に児童精神科医や児童心理士を配置し、高い専門性を必要とする相談について対応することができる体制を構築する予定でございます。障害福祉課及びすこやか福祉センターと連携をし、相談者が適時適切な支援を受けることができるような体制を整備してまいります。
次に、共助、地域との連携についてでございます。キッズ・プラザには保護者や地域の育成団体の方々、当該小学校長等をメンバーとした運営委員会を設置し、年間の事業計画や子どもたちの様子などを共有しております。また、児童館と同様に、地域と連携した行事等に取り組むとともに、日々の活動から子どもの状況の把握に努め、適切な対応も行っているところでございます。今後は、児童館やキッズ・プラザ、学童クラブなど様々な場所で地域と連携を深め、共助を高めてまいりたいと考えております。
続きまして、要保護児童対策地域協議会の在り方に関わる検証についてでございます。子ども家庭支援センターでは、要保護児童対策地域協議会の調整機関として、各種会議の開催、ケース検討会議等を行っております。地域連携の核である協議会の重要性は認識しており、現在も運用に関わる課題整理などを行っているところでございます。区が児童相談所を設置し、子ども家庭支援センターと一体で運営することを機に、協議会の効果的な運用について工夫してまいります。
最後に、子ども・若者の支援に関わる区のリーダーシップについてでございます。支援を必要とする子ども・若者及びその家族に対する支援は、子ども・若者支援センター、すこやか福祉センター、地域の関係機関などが連携し一体となって行っていく必要があります。区がそれらのネットワークの中心となってリーダーシップを取って、各関係機関との連携をより実効性のあるものにしていきたいと考えております。
○総務部長(海老沢) 私からは、保健所の応援体制についての御質問にお答えいたします。
各すこやかセンターと子育て支援課から応援の保健師を1名ずつ合計5名の固定メンバーを年度末まで派遣しているほか、人材派遣を活用してコールセンター業務や疫学調査を行う看護師を確保しているところでございます。感染拡大のピーク時に新規陽性者数が増加した場合には、地域包括ケア推進課や障害福祉課の所属する保健師の協力も得て、さらなる応援体制を構築したところでございます。
続きまして、保健所業務の持続可能な体制の構築についてでございます。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う保健所の業務の増加に対しては、保健師や事務職の職員による応援体制を構築していたほか、業務委託や人材派遣、会計年度任用職員の採用など様々な手法により対応してきたところでございます。今後見込まれるさらなる業務量の増加に対しまして職員による応援体制が限界に達しつつあるため、人材派遣の規模の拡大を図っているところでございますが、人材派遣を通じても看護師等の確保をするのは困難な状況が続いているところでございます。今後とも人材確保の努力を継続するとともに、業務の効率化や優先順位付けにより人員を捻出する必要があるというふうに考えてございます。