令和3年 第4回定例会 12月10日 第85号議案
中野区立児童館条例の一部を改正する条例 賛成討論
第85号議案 中野区立児童館条例の一部を改正する条例に賛成の立場で討論いたします。
この条例は、朝日が丘児童館、新井薬師児童館、大和西児童館及び弥生児童館を廃止するための条例です。
田中前区長の元、児童館を無くす計画に対し、私は一貫して反対し、子どもたちを学校の中のキッズ・プラザだけに押し込めてしまうことがないようにと常に申し上げてきました。2018年、児童館を残すことを公約に掲げた酒井区長が就任され、何とか児童館の存続が保たれることになり、私は大変うれしく思いました。
しかし、以下に述べる理由から、今回の4つの児童館を廃止する条例改正に賛成したいと思います。
まず初めに、私の児童館のあり方についての考え方を述べさせていただきます。
2005年、区が中野区次世代育成支援行動計画(前期計画)において、児童館の機能転換を発表し、小学生の居場所を小学校の中のキッズプラザとし、児童館には中高生館を整備する方針が打ち出されました。その後計画は変更を重ね、ついに9館、中高生が使えるU18プラザさえも無くす方向に進みました。
これでは小学生の居場所は学校の中のキッズ・プラザしかなくなってしまいます。児童館全廃の方針には区民も猛反対をしました。2018年、酒井区長が区長に就任され、児童館が全廃されることは無くなり、児童館の存続が保たれることになりました。
私はその後も、児童館について、質問を繰り返してきました。
その主な質問の内容は、
- 何よりも大切なことは、これまで中野区の多くの子どもたちを育ててきた児童館職員の意見を良く聞き新しい児童館のあり方を考えること。
- 需要の高い学童クラブは児童館に残し、有効に活用すること。その場しのぎで民間委託をして、計画性もなく子どもたちを分断しないこと。
- 存続できる児童館がそばにある学校には、プレハブ等を建て無理にキッズ・プラザを作る必要はないこと。
職員がしっかりと子どもの育ちを見守っていく機能と、財政的な観点から、今ある児童館を有効活用していくことを私は一貫して質問してきました。その上で、今回の議案、4館の児童館を廃止することに賛成の理由を申し上げます。
賛成の理由1は、財政面です。
「児童館が存続するのであれば、その地域にある学校の中のキッズ・プラザはいらない」と私はたびたび申し上げてきました。しかし、現在のキッズ・プラザを利用しているお子さんとその保護者、これから小学校に入学するお子さんの保護者にもキッズ・プラザは人気があるのも事実です。すでにキッズ・プラザが多くの小学生に必要な施設になってきているのです。
では、多くの小学生がキッズ・プラザを利用していく中で、現在残っている18館の児童館を全て維持していく体力が今後も中野区にあるのでしょうか。児童館を維持していくには大幅な職員の増員、或いは民間委託費を予算計上しなくてはなりません。また1969年に建てられた新井薬師児童館を始めとして4館の児童館は老朽化しています。近い将来建て替えが必要になってきます。児童館の建替えには1館5億円掛かると言います。もちろん子どもたちには多くの選べる居場所を作ってあげたい、しかし維持管理費、人件費などを考え、また、民間委託を視野に入れて、予算を少なく見積ったとしても、18館の児童館を維持、管理、運営していくことは大変厳しい状況ではないでしょうか。
少し前になりますが、大和西児童館を見学しました。遊んでいたのは数名の小学生でした。館長からは、ほとんどのお子さんが目の前にある美鳩小学校のキッズ・プラザと校庭で遊んでいると言う説明を受けました。
キッズ・プラザを全校配置し、現在残っている児童館18館を全て残すのでは、区民へ財政負担が重くのしかかります。
多種多様な課題を抱えている区の財政の使い方として児童館数を減らさないで質の高い児童館運営は困難であると思います。
賛成の理由2です。そして私はこちらが重要と考えます。
子どもたちの居場所を減らすことには誰もが反対であり、特に、毎日児童館を必要として通ってくる子どもたちと向き合う職員の方々は児童館の必要性を感じています。
私は、田中前区政で児童館縮小、廃止計画が進む中、何度も、いくつもの児童館に行き、現場の職員たちの声を聞きました。職員は全員「児童館を無くさないで欲しい」と発言していました。しかし、今回、廃止となる児童館へ出向き職員の意見を伺ったところ「廃止しか選択肢はないのではないか」との返事でした。今回廃止にはならない館の職員たちも皆同じ意見でした。
それは、前区政の時と異なり、この4館を廃止にすることを含めて、今後の児童館のあり方を検討して決めたのは、「これからの児童館プロジェクト」等のメンバーとなった現場の職員たちだからです。
児童館のあり方については、私が議員になる前から、ほぼ20年にわたり議論されてきました。前区政では、児童館を縮小・廃止の方向で来たので、長年にわたり児童指導などの福祉職の職員は採用されませんでした。今後数年で50代の職員が次々と退職していきます。今年2人の職員が児童館に採用されましたが、その職員以外の一番若い児童館職員も50代です。今でも再任用を含めて1児童館平均3.8人体制で、人を増やして欲しいと悲鳴を上げている状態です。今後退職者が次々と出る中、子どもたちと向き合いながら児童館運営の質を落とさずに運営することは不可能に近いと職員たちは危惧しています。そして、彼ら自身のくだした結論が、この4館の廃止を含めた児童館数を削減していくことでした。
現在のままの18館の児童館を残すとなれば、職員の大量採用、もしくは民間委託を進めることが必須です。しかし、社会経験の少ない新人職員や異動の激しい民間委託の職員に任せていくのでは、これまで中野区の児童館職員たちが築いてきた、子どもたちから必要とされ、保護者や地域の方から愛されてきた児童館経営は難しいと考えます。
中野区が誇る児童館が果たしてきた役割は、単に「児童館」と名がついた空間・建物で子どもたちが遊ぶだけではありません。そこには、学校に行けない子ども、学校ではいじめられても児童館には来れる子ども等を、見守り、一緒に過ごしてくれる職員の存在がありました。職員たちは複雑化、多様化する親の悩みにも寄り添い、親と一緒に子育てをしてきました。また、職員たちは地域団体、民生・児童委員、地区委員会等と繋がり、イベントを開催し、運営協議会や地区懇談会等で子どもたちの問題を話し合い、地域で多くの人と一緒に子どもたちの健全育成に寄与してきました。キッズ・プラザが出来てからは児童館館長は、児童館館長とキッズ・プラザ館長を務め、学校との調整、地域との調整などの役目もはたしてきました。
もしこの議案が否決され、新たに4館分の職員や民間委託での職員を採用するとなってしまっても、新しい職員たちには現在の職員たちと共に働き、学ぶ時間が必要です。現在でも多忙な職員が、新たな職員を育てながら、18館の児童館を維持していくのは、大変厳しい状況となり、それは児童館全体の質の低下につながります。
この20年間、トップの考え方で、ころころ変わった児童館のあり方、どのようにしたら、一番子どもたちのためになるかと、児童館職員がだした結論が児童館数は減らしても中身を充実させていくと言う考え方です。私は、この現場の声を尊重したいと思います。
今回の4つの児童館を廃止する条例においては、多くの子どもたちと遊び、笑い、ある時は涙し、親たちを支え、区のくるくる変わる児童館のあり方の方針に翻弄されながらも、子どもたちや地域住民に愛され続ける中野区の児童館を死守してきた職員たちが出した結論、それを私は支持し、賛成の討論といたします。
どうぞ同僚議員の皆様のご賛同をお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。